円安が変える日本のファッション:ユニクロの世界戦略と観光客が支える高級品市場
2026年、記録的な円安が日本のファッションを揺らしている。ユニクロは世界戦略を進める一方で値上げに動き、円安を追い風にした訪日客が高級品市場を潤す。光と影を冷静に読み解く。
長年ファッション業界を見てきた者として、私は個々の流行よりも、その背後で市場を動かす大きな力に注目してきた。2026年の日本のファッションは、まさにそうした力が交錯する興味深い局面にある。ここで鍵を握るのは新作やトレンドではなく、記録的な円安が業界全体にもたらしている、光と影の両面であり、これこそ私が最も注視している点だ。
ユニクロの好調と警戒
まず象徴的なのがユニクロを擁するファーストリテイリングだ。同社は8月期通期の営業利益予想を従来の7000億円から7300億円へと引き上げた。しかし発表後、株価はむしろ下落した。背景には円安への警戒がある。約40年ぶりとも言われる水準の円安が、世界中から調達する衣料品や輸送のコストを押し上げているためだ。
値上げと国内の逆風
その影響は消費者にも及ぶ。同社は国内の第4四半期について売上と利益が減少すると見込み、秋冬商品の一部を約4パーセント値上げする方針を示した。円安は輸入コストを高め、国内市場には明確な逆風となる。好調な決算の裏で、足元の国内事業には慎重な見方が必要だという、率直で厳しい現実がここにはっきりと表れている。
観光客が支える売上
一方で、円安は追い風にもなっている。ファーストリテイリングによれば、11月末までの3か月間で、訪日外国人がユニクロの国内売上の1割を占めた。前年の8パーセントからの上昇である。安くなった円を求めて訪れる旅行者が、国内消費の重要な担い手になりつつある。同じ円安が、立場によって恵みにも重荷にもなるのだ。
沸く高級品市場
この構図は高級品市場でより鮮明だ。2026年上半期、日本の百貨店における宝石や貴金属、美術品の売上は前年から19パーセント増え、約20億ドルに達した。円安を活かす海外からの旅行者に加え、底堅い国内消費と店舗の刷新が、この伸びを支えている。高級品を巡っては、円安はむしろ市場を潤す方向に働いているといえる。
私の冷静な見方
世界に目を向ければ、ファーストリテイリングの野心も見える。今年の売上高予想3兆9000億円が達成されれば、同社はH&Mに肉薄し、ザラを擁するインディテックスをも視野に入れる。とはいえ私は楽観に傾きすぎないようにしている。円安は永遠には続かず、観光需要も為替次第だ。真の課題は、通貨の追い風が止んだ後も強さを保てるかどうかにある。





